複数の事業所に雇用されるようになったとき

1.手続内容
(1)被保険者が同時に複数(2か所以上)の適用事業所に使用されることにより、管轄する年金事務所または保険者が複数となる場合は、被保険者が届出を行い、年金事務所または保険者のいずれかを選択します。

(2)届出の結果、選択した事業所を管轄する年金事務所(または健康保険組合)が当該被保険者に関する事務を行うこととなります。なお、健康保険組合を選択した場合であっても厚生年金保険の事務は年金事務所が行います。
※ この届書の提出に当っては、適用事業所の被保険者となるための「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」の提出が前提となります。新たに被保険者となる場合は、事業所から資格取得届が提出されていることを確認してください。

以上、日本年金機構のサイトより

原則はその通りとしても、社会保険に加入すべき要件として一般社員の4分の3以上の勤務というのがありますから、週にして勤務時間30時間を複数の事業所で満たすのは物理的に不可能ということで、一般の社員には適用されることはほとんどないといってよいでしょう。

しかし、役員の場合には双方で代表取締役であるということも考えられますので注意しなければなりません。

役員の被保険者資格について、昭和24年7月28日保発第74号通知では、

まず、『役員(中略)であっても、法人から労務の対償として報酬を受けている者は、法人に使用される者として被保険者の資格を取得させる』としています。

さらに、労務の対象として報酬を受けている役員かどうかの判断については、
『その業務が実態において法人の経営に対する参画を内容とする経常的な労務の提供であり、かつ、その報酬が当該業務の対価として当該法人より経常的に支払いを受けるものであるかを基準として判断されたい。』とし、その判断基準に以下の6つを挙げています。

① 当該法人の事業所に定期的に出勤しているかどうか
② 当該法人における職以外に多くの職を兼ねていないかどうか
③ 当該法人の役員会等に出席しているかどうか
④ 当該法人の役員への連絡調整又は職員に対する指揮監督に従事しているかどうか
⑤ 当該法人において求めに応じて意見を述べる立場にとどまっていないかどうか
⑥ 当該法人等より支払いを受ける報酬が社会通念上労務の内容に相応したものであって実費弁償程度の水準にとどまっていないかどうか

社会保険総合調査など、年金事務所では、法人代表者及び役員の資格取得については、以下の点を確認されます。

法人の役員の報酬の有無を確認する
報酬がある場合、その報酬は労務の対象としての経常的な報酬かどうかを確認する
労務の対象である場合、報酬金額の確認を行い、実費弁償程度の金額かどうかの確認をする
実費弁償程度の金額を超えている場合には、経営に対する参画を内容とする経常的な労務の提供か、経常的な支払をうけるものであるかを確認する

また、確認にあたっては、一律的な判断は難しく、上記の判断の基準①〜⑥を参考に、それぞれの事案ごとに実態に基づき総合的に判断されるようです。

二以上の事業所から報酬を受けている場合の標準報酬月額は、それぞれの事業所ごとに別々に決定されるのではなく、被保険者が各事業所から受ける報酬の月額を合算した額をもとに、1つの標準報酬月額が決定されます。
この標準報酬月額をもとに保険料が算定されるのですが、その保険料は、各事業所での報酬の月額に比例して按分されます。標準賞与額も同様の方法により算定されます。
各事業所の事業主は、その按分した保険料の納付義務を負うことになります。

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