「時間外労働の限度に関する基準」(平成10年労働省告示第154号)が改正され、次の事項が新たに追加されています(平成22年4月1日施行)。
①特別条項付き協定(注1)を締結する場合、限度時間を超える時間外労働に係る割増賃金率を定めること
②①の率を法定割増賃金率(2割5分以上)を超える率とするよう努める乙と
③限度時間を超える時間外労働をできる限り短くするよう努めること
この結果、特別条項付き36協定を締結するには、
一定の期間(1日を超え3か月以内の期間及び1年間)ごとに特別条項を設けて限度時間を超えて労働時間を延長する定めを行う場合には、それぞれの期間ごとに割増賃金率を定めること
が必要となりました。
したがって、例えば、1か月45時間の限度時間を超える場合と1年360時間の限度時間を超える場合の双方について特別条項を設ける場合には、
1か月45時間を超えた場合は○○%、1年360時間を超えた場合は●●%
又は1か月45時間を超えた場合又は1年360時間を超えた場合は○○%
のように割増賃金率をそれぞれの期間ごとに定める必要があります(注2)。
(注1)36協定においては1日を超え3か月以内の期間と1年間の二通りの一定の期間について延長時間を定める必要がありますが、特別な事情が生じた場合に、1日を超え3か月以内の一定の期間についての限度時間(例えば、1か月の場合は45時間、1年単位の変形労働時間制の場合は1か月42時間等)を超えたり、1年の限度時間360時間(1年変形制は320時間)を超える延長時聞を定める場合には特別条項を設ける必要があります。
(注2)月ごとの業務の変動が激しく、例えば1か月45時間の限度時間を超える特別条項を設けている場合に、1年については限度時間の360時間の範囲内とし特別条項を設けないときは、当然のことながら1か月45時間を超える時間外労働についてのみ割増賃金率を定めれば足ります。
特別条項にお防る割増賃金率の記載例
特別条項を1か月と1年について設定し、割増賃金率を異なる率としている場合
一定期間における延長時間は、1か月45時間、1年360時間とする。ただし、通常の生産量を大幅に超える受注が集中し、特に納期がひっ迫したときは、労使の協議を経て、6回を限度として1か月60時間まで延長することができ、1年420時間まで延長することができる。この場合の割増賃金率は、1か月45時間を超えた場合は○○%(注3)、1年360時間を超えた場合は●●%(注3)とする。
特別条項を3か月と1年について設定し、割増賃金率を同率としている場合
一定期間における延長時間は、3か月120時間、I年360時間とする。ただし、通常の生産量を大幅に超える受注が集中し、特に納期がひっ迫したときは、労使の協議を経て、2回を限度として3か月150時間まで延長することができ、1年400時間まで延長することができる。この場合の割増賃金率は、3か月120時間を超えた場合または1年360時間を超えた場合は○○%(注3)とする。
(注3)割増賃金率は2割5分以上の率を定めることになりますが、改正限度基準に基づき労使間の協議等により2割5分を超える率とするよう努めなければなりません。
1か月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率については、改正労働基準法により5割以上(適用猶予対象の中小企業を除く。)に引き上げられています(平成22年4月1日以降)。したがって、例えば、割増賃金率引上げの対象事業場において、特別条項付き36協定で1か月45時間を超える時間外労働について割増賃金率を3割と定めた場合には、1か月45時間を超え60時間までの時間外労働に係る割増賃金率は3割で、1か月60時間を超える時間外労働に係る割増賃金率は5割以上で計算することになります。
特別条項付き36協定において新たな割増賃金率を定めた場合には、労働基準法第89条第2号に定める「賃金の決定、計算及び支払の方法」に関するものであるため、就業規則にも当該割増賃金率を規定する必要があります。
「特別の事情」は、「臨時的なもの」に限られます。
「臨時的なもの」とは、一時的または突発的に、時間外労働を行わせる必要のあるものであり、全体として 1 年の半分を超えないことが見込まれるものを指します。限度時間を超えて時間外労働を行わせなければならない特別の事情は、限度時間以内の時間外労働をさせる必要のある具体的事由よりも限定的である必要があります。
「特別の事情」の例
〈臨時的と認められるもの〉
●予算、決算業務 ●ボーナス商戦に伴う業務の繁忙 ●納期のひっ迫 ●大規模なクレームへの対応 ●機械のトラブルへの対応
〈臨時的と認められないもの〉
(特に事由を限定せず)業務の都合上必要なとき ●(特に事由を限定せず)業務上やむを得ないとき
(特に事由を限定せず) ● 業務繁忙なとき ●使用者が必要と認めるとき ●年間を通じて適用されることが明らかな事由
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