電子申請の現状

埼玉県社会保険労務士会所沢支部2015年支部会報に投稿しました。
昨年、暮も押し迫る頃、総務省より「平成25年度における行政手続オンライン化等の状況」が発表されました。社会保険・労働保険における電子申請利用率は平成24年度に比べて1.5ポイント改善され5.7%となったようです。

いつも比較されるのですが、登記(総務省)関係の61.2%、国税(財務省)関係の55.6%という数字を見ると厚労省の数字があまりにも低く社労士の電子申請に対する姿勢に対して、身内からも自虐的な意見も垣間見られるところです。
ところが、電子申請件数全体をみると、登記は1億2千100万件、国税は1千700万件、社保・労保が8千300万件で数的には遜色ありませんし、登記関係のうち1億1千600万件は不動産登記と商標・法人に係る登記事項証明書等の交付請求で、国税関係ではうち所得税の申告が930万件ということですから、司法書士、税理士の電子申請に対する取り組みに比べて社労士が特に遅れているわけでもなさそうです。
API (Application Programming Interface)とは
いうまでもなく、現在、社労士が電子申請を行うとき政府が運営する電子申請システム(e-Gov)専用Webサイトにアクセスします。手続きの受付方法としてブラウザに直接入力して行う「通常申請」と「一括申請」の2通りがあります。「通常申請」では一つの書類を入力・添付する毎に電子署名を付していくため手間がかかるのが難点でした。それに対して「一括申請」は複数の申請、複数の関与先をまとめてZipファイルに圧縮、まとめて送信できるため簡便なのですが、専門のソフトウェアが必要なため一般にまでは普及していないというのが現状です。
社労士の電子申請件数が伸びないことに業を煮やしたというわけではないのでしょうが、昨年、総務省から電子申請のさらなる利便性の向上を図るため外部連携APIを整備し、その仕様を公開することが発表されました。昨年10月には仕様が公開され、11月にはソフトウェア企業向けの説明会も行われたようです。
聞き慣れない言葉ですが「外部連携APIの整備」とは、今までe-GovのWebサイトで行われていた申請から進捗状況確認、取下げ、公文書取得まで処理を外部のソフトウェアから直接処理できるようにするためのプログラムの入り口を整えようというもので、総務省ではこれによって一般企業の電子申請に拍車がかかるものと期待しているようです。具体的には給与ソフトへのバンドルによって資格取得、喪失、賞与、算定基礎などの申請がボタン一つで行えるようになることが予想されます。給与ソフトには本人の基本情報はもちろん、家族情報、履歴等さまざまなデータの「宝庫」です。そこから社会保険関連の電子申請が行えるとなると、いずれ給与ソフトメーカーの宣伝に「社労士いらず」と謳われることになるかもしれません。
先の総務省のデータによると厚労省関係の電子申請で最も多いのが賞与支払届で次が算定基礎届でこの2つで全体の63%を占めます。今年はまずこの2つから電子申請を始めてみませんか。

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