年金の負担と給付

年金の負担と給付
老齢年金は「老い」という保険事故を補填する「保険」商品です。
老化という避けられない事故、反対にいえば誰にもやってくる老いだからこそ貰って当たり前と考えてしまうのでしょうが、確かに払った保険料と給付がバランスする「損益分岐点」は存在し、この先何十年も保険料を支払うのであれば気になるところであることに間違いはありません。

国民年金の場合
15,250円→1か月の保険料(平成26年度)—①
1,610円=(772,800円→平成26年4月分からの年金額(満額)÷480)—②
①÷②≒9.4年

65歳で基礎年金を受給し始めておおよそ9年半で負担と給付のバランスがとれるということになります。ここで考慮しなければならないのは、給付に使われる「国庫負担」です。以下日本年金機構のWebサイトより。

「国庫負担(基礎年金の国庫負担を2分の1へ引き上げ)
平成16年(2004年)の法律改正では、全国民に共通する基礎年金について、これまで3分の1であった国庫負担割合を、現役世代の保険料負担が過重にならないように配慮しながら、年金給付水準を適正に保つために平成21年度までに基礎年金の国庫負担割合を2分の1に引き上げることを定めました。
平成16年度からその引き上げに着手し、平成21年度から国庫負担割合は、2分の1になりました。」

自分の意志にかかわらず、支払われる年金の半分には税金が投入され、年金の受給資格がない人には、その恩恵を受け取ることができない、ということになります。

厚生年金の場合
本人+専業主婦である妻で毎月の給与28万円(平成26年度の健康保険の任意継続被保険者の標準報酬月額の上限)とします。

48,927円→1か月の保険料(本人+会社負担)—③
増える年金額
3,220円→基礎年金の部分②より1,610円×2(本人+妻)—④
報酬比例の部分
1,534円→平均標準報酬額×0.5481%×支払月数—⑤
⑤+⑥=4,754—⑦
∴③÷⑦≒10.29年

単身者
増える年金額は妻帯者の場合から3号被保険者分を引いた金額なので
⑦-1,610=3,144—⑧
∴③÷⑧≒15.56年

単純化のために、男性が被保険者で3号被保険者は「妻」、保険料率、所得代替率等現時点での数字を使用しています。
法定福利費も会社では「人件費」としている以上、会社負担分も給与に組み込まれているとして計算していますが、本人負担分だけで収支を考えれば収支がバランスする期間は半分になるわけですから、これほどお得な金融商品はありません。また、②の定数があることで所得の再分配的効果もあり、平均標準報酬額の多寡あるいは第3号被保険者の有無で「損益分岐点」が変化します。

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